公開日 2020年08月05日
何事も言葉にして相手に伝えないと円滑に運びません。さらに文字にして互いの意思の確認をします。特に最近はSNSなど伝達手段が発達し、手軽に頻繁に情報や意見が交換されます。一方、時に過剰な言葉が互いを傷つけ誤解を生み、残念なことに信頼関係を壊すこともあるようです。
霊長類を長年研究した人によると、ゴリラの世界に文字はないものの、意思の伝達方法や行動規範があると言います。例えば、リーダーには「俺の背中を見よ」とばかりに先頭に立ち、後ろに続く仲間を振り返ることなく信頼し行動する型があるそうです。無言のコミュニケーションで集団を率いるのでしょう。
人間もゴリラと同様、言葉以外にコミュニケーション手段を持っています。ことわざに「目は口ほどに物を言う」とあるように、物言わぬ目も強烈な働きをします。映画や演劇などでジーンと胸打つセリフがあるかと思えば、一方で表情や何とも言えない仕草が言葉以上の力で忘れられない名場面を作ります。また、日常生活でも「ここは何も言わないで」という時がありますよね。
言葉に出さず意思を伝達する文化は、そこに同じ価値観を共有した土壌があり、互いの関係を深め、より良い社会関係を作ることにもつながります。落語に出てくる仲の良い老夫婦の会話です。夫「あの人、誰だったっけ?」。妻「あの人よ」。夫「そうかあの人か」。もう一つ、夫「あれどうなった?」。妻「あれ済みましたよ、ご心配なく」。夫「ありがとう」。指示語だらけで意味不明、周りは通じ合っているのかと不安ですが、本人同士はわかったつもりだから不思議ですね。二人の間は「以心伝心」なのでしょう。
大事なのは「時に雄弁・時に寡黙」、言葉による伝達と言葉にたよらない心のコミュニケーション両方です。それにつけても、連れ合いとは「阿吽の呼吸」といきたいですね。
(市報なかつ令和2年8月15日号掲載)