市長コラム~つなぐ~ 年を取ること

公開日 2020年09月09日

 まもなく敬老の日です。昔の童謡に「村の渡しの船頭さんは今年60のおじいさん」と歌われます。かつては60歳ともなると相当のお年寄りだったのでしょう。平均寿命が80歳を超えた現在は、いつからお年寄りと呼ぶのでしょうか。
 子供の頃、人は年を取るにつれて成長し、20歳になると大人の仲間入り、やがて一人前となり、60歳ともなると「悟りを得た人生の達人」を想像したものです。ところが、自分がその歳になってみると未熟な点ばかりで、イメージしていた大人像にはほど遠く、人間の成長は一生仕事で難しいものだと感じます。
 ところで、APU(立命館アジア太平洋大学)の学長、出口治明さんが近著「還暦からの底力」で高齢者の生き方について述べています。出口さんは、60歳を過ぎてからネットの生命保険会社を設立するなど大活躍されている博識の実践行動家ですが、高齢期を元気に過ごす心構えや仕組みを提案しています。例えば、健康寿命を延ばす、年齢フリーの世の中にして定年制を廃止する、一生懸命自分の好きなことをする、次世代のために自分のできることに取り組むなど多岐にわたり示唆に富んでいます。出口さんのような生き方はできなくても、人生100年時代が予測される中、高齢期をどう過ごしていくのか、誰にとっても身近で重要なことです。心平らかに元気に楽しく過ごす知恵を持ち自分で生き抜く覚悟は大切です。
 行政として高齢者をどう支援していくか。加えて、一方で未来を支える次世代の子供たちをどう育てていくか。これら課題の広さ・重さを考えると、首長として改めて気を引き締めて事に当たらねばなりません。個人の生き方と公的扶助のあり方との接点で知恵と方法を模索していく時代が続きます。
 人は誰も、何歳になろうと、自分の船は自分で舵取る船頭さんでいたいと考えているに違いありませんから。

年を取ること

(市報なかつ令和2年9月15日号掲載)

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