公開日 2020年11月25日
花火と言えば夏の話題でしたが、最近は冬でも打ち上げ花火が夜空を飾り、子供も大人も楽しみます。花火がいつ頃から鑑賞され始めたのか、その由来については諸説あるようです。江戸時代1733年、飢饉のうえに疫病が流行し、亡くなられた人々の慰霊と悪病退散の願いを込めたお祭りが催され、隅田川で打ち上げられたことに始まるとも言われます。浮世絵にも多くの人が船や橋の上で花火を見物する様が描かれています。
現代の打ち上げ花火は、いろいろな形、色、大きさがあります。形は、菊、牡丹、流行りの型物などがあり、色は赤、黄、青、緑、紫、銀、金の7色がよく用いられます。大きさも多様、大玉は一般的に尺玉(外径約30cm)以上のもので、四尺玉となると外径が1mを超え、上空で開花すると800mもの大輪になると言います。打ち上げはコンピュータで制御され、美しさと連発の迫力は圧巻です。
なぜ、花火は多くの人の関心を引くのでしょうか。それは、見映えはもちろん、人それぞれが花火に感じるものや託すものがあるからかもしれません。例えば、幼い子供たちは、いつもは怖い暗がりの空がきれいに彩られる不思議さと将来の夢を。若い恋人たちは、胸のときめきと未来の幸せを。経験を積んだ大人は、過去への郷愁と明日の元気を。花火は人それぞれに思いを抱かせますね。
花火で思い出すのは、芥川龍之介の小説「舞踏会」。仏海軍将校が主人公明子と鹿鳴館で語り合う場面です。「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生(ヴィ)のような花火の事を。」花火を人生と結び付けた印象的な言葉です。
今年は、残念ながらコロナの影響で全国各地の花火大会が中止されました。代わりに花火師や有志の皆さんが、密を避け予告はせずに花火を打ち上げています。コロナ収束と経済再生の願いを込め、エールを送っているにちがいありません。「明日に向かってみんなで乗り越えよう」と。
(市報なかつ令和2年12月1日号掲載)