市長コラム~つなぐ~ 月とともに

公開日 2021年01月06日

 「月日」と呼ぶように、太陽と月と地球の動きで我々は時間とその経過を知ります。日本の暦は、明治初めまでは太陰太陽暦(旧暦)です。太陽が昇り、沈み、再び昇るまでを1日とし、月の満ち欠けを観察し、何も見えない新月から次の新月までを1か月と定めていました。この旧暦によると1年が約354日となり、実際の季節とずれが大きくなることから、数年に一度「うるう月」を入れ1年を13か月としていたのです。
 近代国家を目指す明治政府は、太陽暦(新暦)を採用し、旧暦明治5年12月3日を新暦6年1月1日に改暦しました。その理由は、諸外国が太陽暦であったことや財政上の都合もあったと言われます。この時、政府が国民へ知らせたのがほんの半月ほど前という急仕立て、世の中は相当混乱したようです。ここでも活躍したのは我らが福澤諭吉先生、「改暦弁」を著し、地球と月の関係を図で示し丁寧にわかりやすく説明してくれました。
 どちらの暦であれ、月の重要な働きは変わりません。宇宙に浮かぶ衛星としての月も、それを活用し時を表す月も、人類の歴史の中で大きな役割を果たしてきました。清少納言の「夏は夜。月のころはさらなり」、松尾芭蕉の「月日は百代の過客にして」、絢香の「三日月」、いずれも古から現在まで見た月は同じです。月はいつの時代にも太陽とともに大宇宙の神秘を感じさせる始まりであり、音楽・美術・文学などあらゆる芸術に登場し人生のテーマの引き合いとなり、地球人をやさしく包み込んでいます。
 今年の元旦は旧暦11月18日、満月から三日後の月です。夜空を眺めると無限の宇宙空間と悠久の時の流れの前に、人間の存在がほんの一点かつ一瞬であることに気づかされます。だからこそ、新年を迎え一日一日の安寧を祈り、中津の「安心・元気・未来づくり」に全力を尽くします。古の賢人と比べ、「月とスッポン」とならないように。

月とともに

(市報なかつ令和3年1月15日号掲載)

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