公開日 2021年08月04日
中津の海岸線は、小祝から大新田を経て今津・鍋島まで、日本に誇る大干潟が広がります。ここには多種の生き物が生息し、季節の野鳥が訪れます。
子供の頃の記憶です。現在のダイハツ九州の工場の大半が遠浅の海で、潮が引くと一面に砂原が現れます。アサリ、ハマグリ、アカガイ、キヌガイ、タイラギなどいろいろな貝を採り、突き道具で魚を捕獲。潮が満ちてくると今度は泳ぎや魚釣りです。沖では竹ヒビを利用したノリの養殖が盛んでした。また、松林が続く大新田の砂浜は、遠足のメッカ。潮干狩り、相撲、宝さがしと楽しみました。犬丸川を渡った鍋島の海は石原で、数キロ沖の灯台まで歩いて行きアサリを掘りました。
干潟を歩き、時に貝殻で足裏を切りながらも海の幸を捕獲し遊ぶ楽しさは子供には格別でした。大人も夜中に集魚灯を持ち魚とりを楽しんだものです。一方、遠浅の海も潮が満ちる際の水の流れは怖いくらいに速く危ないことを実体験で知りました。
今の子供たちは、日常生活で干潟遊びの経験が少なく、海の様子を知る機会が昔に比べ減っています。「中津干潟」と命名し、命を営むいろいろな生物が生きる様を現地で見せて、中津干潟のすごさ、面白さ、魅力、接し方を楽しく教えてくれたのが、故足利由紀子さんをはじめ「水辺に遊ぶ会」の皆さんです。カブトガニなど希少生物の研究や観察、お魚料理教室、海岸の清掃など活動は多岐にわたり、自然と人間の共生の大切さを伝えてくれます。
同会は7月1日を中津干潟の日と定め、『足利由紀子の仕事展』を開催しました。干潟に溶け込むように、いきいきとやさしい表情で多くの仲間、漁業者、子供たちと活動する足利さんの映像。「逝くのは早すぎましたよ」と改めて別れを告げた今夏です。
(市報なかつ令和3年8月15日号掲載)