市長コラム~つなぐ~ ウイルスとの共生

公開日 2021年09月08日

 ウイルスが、全世界の人々の生活を脅かしてしまったことが過去にもあります。
 天然痘、紀元前の昔から存在し、何度も大流行を繰り返し世界中で多くの人の命を奪った感染症です。18世紀ごろから、ワクチンの研究が進み、ようやく1980年に、世界保健機構(WHO)が根絶を宣言しました。人類は長い間、天然痘という大苦難に大きな犠牲を払ってきましたが、医学的英知で克服したのです。
 実は中津においても、江戸時代に天然痘の治療法の研究がなされていたこと、中津市歴史博物館の企画展「伝染病との戦い」で紹介されました。中津藩の10人の医師たちは子どもを伴って長崎に出向き、天然痘のワクチンを接種、中津に持ち帰り全国に先駆け種痘を実施したのです。その後、教育を行う医学校も設立されました。また、中摩村(現山国町)出身の儒医村上姑南は独自に種痘を学ぶなど、医学の先進地中津をしめす出来事です。
 ところで、ウイルスは自然の中に数多く存在します。自分だけでは増殖できず、人間など他の宿主に住みついて威力を増し、健康被害を及ぼします。このため、人類は、ウイルスがもたらす感染症に負けないよう研究を続け、ワクチンを作り、一早く治療薬を生み出せる技術と体制を常に備えていなければなりません。
 新型コロナウイルスは、人間が自然界に存在するウイルスとしっかり向き合っていく必要があるという教訓を改めて示してくれています。文明が発達するほど、公衆衛生や感染症の分野において、先人の苦難を忘れず地道な研究を怠ってはならないのです。
 新型コロナウイルス感染症の影響は、マスク着用のように「非日常が日常」となるほど強烈です。こんな時こそ、人類の安全と繁栄のため、グローバルにつながった協力と英知の結集が、ウイルス研究で発揮されることを強く望みます。どの国にとっても、国民の健康こそ、第一ですから。

(市報なかつ令和3年9月15日号掲載)

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