市長コラム~つなぐ~ 後になってから効く

公開日 2022年10月26日

 歴史家の磯田道史さん曰く、「『冷や酒』、『親の意見』、『福澤諭吉』は後になってから効く。」冷や酒は確かに後で酔いが回ります。「親の意見と茄子の花は千に一つも無駄がない」と言われますが、歳をとるにつれ、なるほどと合点が行きます。そして、福澤先生の教え、本当に明治の時代に言ったのかと思えるくらい先進的で、現代にも通用、むしろ今の方がより重要性を増しています。
 例えば、男女共同参画、性差の区別ない社会の実現は、現在でも大きな課題です。福澤は、明治3年執筆の『中津留別の書』で「男といい女といい、等しく天地間の一人にて軽重別あるべき理なし」と述べ、男女同等と主張します。そのうえで、男女を問わず、精神的・経済的自立がなにより大事と強調されます。
 結婚後の夫婦別姓の問題も、既に明治時代に取り上げ、結婚によって女性が男性の姓を名乗らなければならないことも、その逆もおかしいと言います。結婚は一人の男性と女性が出会って、新しい家族をつくるものであるから、両者を混合した新しい姓を作るべきとあえて奇抜なアイデアさえも提言しています。また、子育ての大変さをわかっているのに、男性が女性を手伝わないのは、人倫の罪にして恥ずかしい行為で、男性自身の判断による行動が文明化、近代化につながるとまで言い切ります。福澤の女性論は、その後も課題を示唆し続け、現代はもちろん、未来に向けて問いかけています。
 これに限らず、数々の福澤の教えは150年経った今も燦然と輝いています。磯田さんの言を借りれば「先が見えすぎた巨人」。まさに「不滅の福澤」と呼ぶにふさわしいですね。
 12月2日まで企画展「今こそ知りたい『学問のすゝめ』~福澤諭吉が中津に残したもの~」開催中。どうぞ福澤記念館へ。効きますよ!

後になってから効く

(市報なかつ令和4年11月1日号掲載)

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