公開日 2023年08月28日
子どもの頃のアニメのヒーローは鉄腕アトム。AI(人工知能)を活用した、「心を持ち、自分の考えで判断できる」自律型ロボットです。谷川俊太郎作詞の主題歌の中では「心やさしいラララ科学の子」と歌われます。鉄腕アトムが大好きなAI研究家、松原仁さんの著書『AIに心は宿るのか』は、AIの活用が注目される今、大変興味深いテーマです。改めて鉄腕アトムの漫画を読んでみました。
手塚治虫さん原作の「青騎士の巻」に「ロボット法」なるものが登場。「ロボットは人間につくすためにうまれたものである」、「人をきずつけたりころしたりしてはいけない」と定められています。心のあるアトムですが、「サンゴ礁の冒険」では、人間との違いを感じ、育ての親のお茶の水博士に「人間並みの心にしてほしい」と訴えます。博士は、アトムの体は人間に尽くすための仕掛けしかなく、改造すると弱虫アトムになると反対しますが、アトムの願いを聞き入れ2日間だけ怖がる心を持たせてやります。予想どおりアトムは恐怖心で幽霊と戦えなくなります。また別の場面では、ロボットが法に背いて人間に反乱を起こし、アトムを誘い「ロボットが支配する王国」をつくろうとします。
「鉄腕アトム」の漫画は、AIの進歩が著しく、その便益と危険性、必要な倫理や道徳など、AI活用の是非が議論される現在に大きな示唆を与えます。AIは人間を幸せにも不幸にもする可能性があります。未来を予測した手塚さんの先見性と社会的問題意識の深さに驚きます。
チェスも将棋も囲碁もAIは人間を負かしましたが、どれも人間社会からなくなってはいません。「これから、人間とロボットは、いろいろな出来事に出会いながら仲よく暮らしていくことじゃろう 明るい未来に向かって。」お茶の水博士のこの言葉どおりにしたいものです。
(市報なかつ令和5年9月1日号掲載)