市長コラム~つなぐ~ 津田梅子

公開日 2023年09月11日

 津田梅子、新五千円札の肖像となる女性です。女性活躍の先駆者と言えば、必ず名前が出てくる人物、東京にある「津田塾大学」の創設者です。市民講座で同大学の大類久恵教授に梅子について講演いただきました。
 梅子の父親である津田仙、福澤諭吉と共にアメリカ訪問団の一員で、幕府の通訳官を務めていました。先進的な考え方を持ち、梅子を明治政府が行った初の女性「開拓使派遣留学生」に応募させます。留学生は6歳から14歳の5人、梅子は最年少。幼子を遠い異国アメリカに10年間も送りだす父母の決意に畏敬の念を抱きます。今で言えば、宇宙の別の星で10年間、親子で顔も見ず声も聞かずに暮らすようなもの、最初に留学の話を聞いた姉は断ります。逆に梅子は「アメリカに行きたいと自分の意志で答えた」と、英文の絵日記に書いているそうです。
 アメリカで多くの人と出会い、滞在10年の予定を1年間延長し、17歳で帰国しましたが、英語が堪能でも日本語が不十分で仕事も見つからず、日本社会に再適応する苦労が続きました。
 しかし、くじけることなく、華族女学校で英語を教えながら、アメリカへ再留学、女子教育への思いは熱く強く、多くの困難を乗り越えて、「女子英学塾(津田塾大学の前身)」の開設を成し遂げます。ヘレン・ケラーやフローレンス・ナイチンゲールとも対面、女性の地位の向上、女性の自立を追求し続けた梅子。「視野を広く持って学び、一人の人間として自立して生きること」など、その考えは福澤諭吉に通じる精神です。
 福澤と津田、共に「塾」と名の付く大学を創設、日本の教育者として燦然と輝いています。「ともに頑張ったなあ」と30歳上の福澤が語り掛ければ、「お札の肖像、少し照れくさいです。先生と一緒に皆さんに使ってほしかったですわ。」と、天界で微笑んでいるかな。

津田梅子
出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」

(市報なかつ令和5年9月15日号掲載)

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